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2021.11.29

シューベルトの史跡をめぐる

現在オーストリアは新型コロナウイルス感染拡大でロックダウンしており、オペラハウスも閉鎖中です。
現地で音楽を楽しむのはまだ先のことになりそうです。そこで、ウィーンの旅を思い出しながら、今回はフランツ・シューベルトについて書いてみたいと思います。

シューベルトのフルートのオリジナル作品は「しぼめる花の主題による序奏と変奏曲D802 Op.160」しかありませんが、交響曲、その他アレンジされた曲を演奏する機会はけっこうあります。

ウィーンで活躍した作曲家はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンをはじめ沢山いますが、シューベルトはウィーン生まれでウィーンで亡くなった数少ない作曲家の一人です。今も市内には生まれた家と亡くなった家の両方を見学することが出来ます。

まずは生まれた家について。
1797年1月31日ウィーンの9区、ヌスドルフシュトラーセ 54で教師の12番目の子供(14人兄弟)として生まれ、1801年まで住んでいた家が「生家」として一般公開されています。
地下鉄「U6」のヌスドルフシュトラーセ駅で降りて徒歩で5、6分のところにあります。

2Fが展示室で、シューベルトが目覚めた時にすぐに書けるように寝るときも外さなかったトレードマークの「めがね」、シューベルトや家族の肖像画、日記、「魔王」「野ばら」等の楽譜、所有していたギター、長兄イグナツが所有していたピアノなどが展示されています。

シューベルトが生まれた家

シューベルトが生まれた家の入口

 

入口右側のプレート

シューベルトが生まれた家の中庭

 

そして亡くなった家は地下鉄「U4」のケッテンブリュッケンガッセ駅から歩いて5分くらいのところにあります。
この駅の改札を出て左側を見るとオットー・ワーグナーが設計したマジョリカハウスが鮮やかに見えます。カールスプラッツ駅もそうですが、この駅もオットー・ワーグナーの設計です。

ケッテンブルッケンガッセ駅

マジョリカハウス

 

そのマジョリカハウスを背にして(改札を出て右)道沿いに5分ほど歩いていくと左側に亡くなった家があります(4区、ケッテンブリュッケンガッセ 6 )。
建物のアーチ状の入口の上には「この家で1828年11月19日、音の詩人 フランツ・シューベルトが亡くなった」と書かれたプレートが掲げられています。
3階の部屋の入り口には「シューベルトの最後の住まい」と書かれたプレートがかかっています。
ここには亡くなる前の2ヶ月半しか住んでいませんでした。
2番目の兄のフェルディナント家族の家で、新しい家だった為、壁もまだ乾かない状態であったのも健康に悪影響を及ぼしたと言われているそうです。
ここには、亡くなる1週間前の最後の手紙、ハ長調の交響曲「グレイト」の1ページ目(初演は1839年ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでメンデルスゾーンの指揮で行われた)、死亡記録、フェルディナントが所有するピアノ、シューベルトの胸像などが展示されています。

シューベルトが亡くなった家

3階のシューベルトが亡くなった家の入口

 

入口左側のプレート

廊下から見た中庭

 

地下鉄「U4」のピルグラムガッセ駅から歩いてほど近いところにはシューベルトのお葬式が執り行われたマルガレーテン 聖ヨゼフ教会(シェーンブルナーシュトラーセ52)があり、入り口右側には「フランツ・シューベルト 彼の亡骸は1828年11月28日にこの教会で別れを告げられた」と書かれたプレートがかかっています。

シューベルトの葬式が行われた教会

 

シューベルトに関しての家は、この他シュライフォーゲルガッセ10にドライメーデルハウスもあります。その名のとおり「3人の娘の館」ですが、諸説いろいろあり、ここでは触れずにおきます。
場所は市電のショッテントーア駅から歩いて数分のところにベートーヴェンが住んでいたパスクァラティハウスがあり、その裏側にあたるのがこの建物です。

パスクァラティハウス(左)とドライメーデルハウス(右)

ドライメーデルハウス

 

またシュピーゲルガッセ9番には「未完成交響曲」を作曲した家があります。建物の角の壁には「フランツ・シューベルトは1822年~1823年に彼の友達のフランツ・フォン・ショーバーの所に住み ここで主にロ短調交響曲を書いた」と記された銘板が掲げられています。隣のシュピーゲルガッセ11番の建物の角にはサリエリが住んで亡くなったと記された銘板がかかっています。
場所はシュテファン寺院から歩いて2、3分のところです。

シューベルト(左)とサリエリ(右)の住居跡

左側のシューベルトが住んだ事を記したプレート

 

右側のサリエリのプレート

 

ほかにシューベルトのモニュメントとしては市立公園に立派な銅像、また中央墓地にはベートーヴェンと並んでお墓があります。

市立公園にあるシューベルト像

中央墓地のベートーヴェン(左)とシューベルト(右)の墓(中央はモーツァルトの記念碑)

 

シューベルトの墓

 

ウィーンに生まれた家と亡くなった家が見学できるのはシューベルトくらいです。
コロナが落ち着いたら是非訪れてみて下さい。


*豆知識:ウィーンは歴史的な記念の建物には紅白の旗が掲げられていてすぐに分かります。
 ちなみに「ガッセ」は小路、「シュトラーセ」は通りと言った意味合いです。
 文に記した住所から場所を想像しながらご覧下さい。

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